新年度を迎えるにあたって
国文学科長・福井 辰彦
2021年4月1日より国文学科長となりました。こうした重い役職に就くのは生まれて初めてのことで、ただただ不安でいっぱい、早くも少し胃がきりきりと痛み始めています。もっともそれ以上に、学科の先生方はじめ周りの方が、「あいつで大丈夫なのか?」とご心配のことと思います。ともかく誠実に職務に当たる所存ですので、長い目・広い心で、ご支援・ご協力の程、よろしくお願い申し上げます。
さて、昨年度は新型コロナウイルス感染症の対応・対策に明け暮れた一年でした。状況はなお厳しく、警戒を緩めることはできませんが、それでも大学は対面授業を再開し、部分的に、少しずつではありますが、元の姿を取り戻そうとしています。
そんな中、新年度、国文学科は61名の新入生を迎えることができました。感染症の影響のみならず、入試制度が二転三転するといった困難も乗り越えて、入学してきた新入生たちに敬意を表し、また心から歓迎いたします。
入学早々、コロナ禍に見舞われ、大学に来ることさえ叶わなかった新2年生にとっては、この春が大学生活の本当のスタートだと言っても良いでしょう。一年生同様、あるいはそれ以上に、戸惑うこと、不安なことが多くあるだろうと思います。学科としても、よく注意を払い、適切な助言・手助けが出来るよう努めてまいります。
3、4年生についても、一年の空白がどのような影響を及ぼしているか、学生たちの様子をよく見ながら、指導に当たりたいと思います。
教員の方では、中古文学担当の本廣陽子先生が、一年間、研究休暇を取られます。代わりに東京大学の田村隆先生、実践女子大学の舟見一哉先生に、授業をご担当いただくことになっています。他大学の先生の授業を受けられる貴重な機会ですので、学生諸君には、積極的に受講して欲しいと思います。
最後に個人的な所感を書くことをお許し下さい。
学習指導要領の「改悪」に象徴されるように、国語・国文の軽視・蔑視は年々強まってゆくように見えます。夜郎自大そのものといった風の古典や伝統の曲解・悪用も散見されます。そして、そうしたことどもは、世の中を行き来する言葉が、軽く、空虚に、また粗暴になってゆく傾向と、どこかでつながっているに違いありません。
「実社会で役に立つこと」「世の中のためになること」、それ自体を否定するつもりは、もちろんありません。しかし、昨今これらの言葉が使われるとき、それは結局「ゼニカネ」の話でしかないように感じます。目先の儲けや効率にしか目を向けない風潮の中で、言葉に敬意と畏怖と責任感を持ち、願わくはそこに古典的教養を「あや」や「うるおい」として添えられるような、そんな若者を育てるには、どうすればよいのか。愚かで不器用な私には、今のところこれといった妙案も浮かばないのですが、その志だけは失わずにいたいと考えているところです。