『国文学論集』57号を刊行しました

目 次

〈論文〉

『方丈記』五大災厄の章段の語りの性格―連語「かとよ」により考える『大鏡』との関係―  小山咲也香

複合動詞から観た源氏物語の表現  本廣 陽子

仏典から見た源氏物語の表現―「心から」「心づから」の語と玉鬘系後記説の関係に注意して―  石井 公成

漢籍から観た源氏物語の表現  藤原 克己

〈二〇二二年度上智大学国文学会冬季大会 シンポジウム〉

高等学校「国語」新学習指導要領への対応と課題

 総括  山本 章博

 パネリスト発表要旨 

 1 高等学校「国語」新学習指導要領への対応と課題について  臼井 浩人

 2 高等学校「国語」新学習指導要領への対応と課題について  岩村 寧子

 3 白百合学園中学高等学校における新学習指導要領へ対応について  古郡 明子

〈二〇二三年度上智大学国文学会夏季大会 シンポジウム〉

 源氏物語の表現の達成 概要報告  瀬間 正之

二〇二二年度国文学会冬季大会発表要旨  石上 真理・中野  遙

二〇二三年度国文学会夏季大会発表要旨  小山咲也香・星野 佳之

二〇二二年度博士学位授与者・修士論文・卒業論文題目

彙報

上智大学国文学会規約

上智大学国文学会土田賞内規

二〇二二年度土田賞選考結果報告

『国文学論集』応募規定

執筆者紹介

上智大学国文学会2023年度冬季大会のご案内

冬季大会は、盛況のうちに終了しました。Zoomによるオンライン開催でしたが、海外(アメリカ、中国)在住の学会員にもご参加いただくことができました。

 今大会は、全てzoomによるオンラインで開催いたします。参加をご希望の方は、以下のフォームよりお申し込み下さい。開催が近くなりましたらzoom ID、パスコードをお知らせします。どうぞ奮ってご参加ください。

申し込みフォーム(締め切り1月17日(水)23:59)→https://forms.gle/h2LgHSGYVFusiDWK7

【開催日時】2024年1月20日(土) 午後1時30分開始  

[第1部 研究発表](午後1時30分~3時40分) 

〇『遊仙窟』四古抄本における口語の理解度の調査の試み

   上智大学国文学専攻博士後期  石 璽彦

〇本居春庭の活用論再考

   鶴見大学准教授 遠藤佳那子

〇久保田万太郎「ふゆぞら」論―虚子と鏡花を補助線に― 

   上智大学文学部助教 福井 拓也      

 休憩 20分間

[第2部 実践報告](午後4時~5時30分) 

上智大学の全学共通科目―「思考と表現」領域の取り組み

 司会  服部 隆 (上智大学文学部教授)

一、報告

・上智大学の基盤教育と「思考と表現」領域の取り組み   服部 隆

・必修科目「思考と表現」の目標と課題

   中野 遙 (上智大学基盤教育センター特任助教)

   斉藤 みか(上智大学基盤教育センター特任助教)

二、報告者相互および会場からの質問

上智大学国文学会 電話・FAX 03-3238-3637   jouchikokubungakkai@yahoo.co.jp

上智大学国文学会2023年度冬季大会 研究発表要旨・実践報告概要

研究発表要旨

『遊仙窟』四古抄本における口語の理解度の調査の試み

   上智大学大学院国文学専攻後期課程 石 璽彦

『遊仙窟』は、唐代伝奇小説の代表格であり、汪辟疆氏(1930)が「唐人口語、尚頼此略存(唐人の口語、なお此れに頼ればほぼ存ず)」と口語資料としての重要性を示している。その口語の研究は、許山秀樹氏(1994)、張黎氏(2014、2020)諸氏が既に注目し、諸々成果も挙げられる。

 しかし、『遊仙窟』には、醍醐寺本・陽明文庫本・真福寺本・金剛寺本という四つの古抄本があり、各々に訓読が付けられ、その訓が必ずしも同一ではない。四つの抄本の中に、唐代口語が理解されず、別の意味で訓読が付けられた例も見られる。後の江戸初期無刊記本に至っても、それらの訓読が継承された例もある。

 今日、以上の諸抄本の訓について、口語語彙理解度を注目する研究がまだ存在しない。本発表では、四抄本中の典型的な口語語彙例を取り上げながら、各々抄本の口語語彙理解度の比較調査を試みる。

本居春庭の活用論再考             

   鶴見大学准教授 遠藤佳那子

 本発表では、本居春庭『詞八衢』(文化五年〈1808〉刊)と『詞通路』(文政十一年〈1828〉序)における活用論を再考する。①春庭の活用表には後接要素との関係だけでなく統語論上の枠組みがあると考えられ、春庭が命令形を活用表に設けないのは形態上の不統一のためだけでなく統語論上の問題があること、②春庭の後継者である義門は『山口栞』(天保七年〈1836〉刊)において「転用」という術語を用いて複合語の語構成について論じているが、これは春庭の活用論を体言の側から補完し彫琢するものとして位置付けられること、以上の点について論じる。

久保田万太郎「ふゆぞら」論―虚子と鏡花を補助線に―     

   上智大学文学部助教  福井 拓也

 これまで不思議と注目されてこなかったようだが、近い時期に同じような不安を、高浜虚子は「俳話(二)」(『ホトトギス』明37・2)で、泉鏡花は「ロマンチツクと自然主義」(『新潮』明41・4)で、それぞれ口にしていた。言葉が歴史的に保持してきたコノテーション、それに目を瞑るような文学表現の趨勢に、虚子も鏡花も違和感を覚えずにはいられなかったのである。

 本発表では、二人に共通の不安――それは埋もれてしまっていた近代文学史上のトピックを指し示している――を補助線にして久保田万太郎の小説「ふゆぞら」(『三田文学』大2・9)を読み解いていく。そこから言葉と世界とをめぐるいくつかのスタンスを明晰化し、その歴史的な展開とジャンル布置とのつながりを考察してみたい。

実践報告概要

上智大学の全学共通科目―「思考と表現」領域の取り組み      

   上智大学文学部教授  服部 隆

 本実践報告では、上智大学基盤教育センターの「思考と表現」領域の取り組みを、必修科目「思考と表現」の実施状況と課題を中心に、担当の先生方からご報告いただき、情報の共有を図りたい。

 上智大学では、二〇二一年度に基盤教育センターが発足し、「キリスト教人間学」「身体知」「思考と表現」「データサイエンス」「展開知」の五領域において、二〇二二年度より全学共通科目を提供している。従来から国文学科は、「文章構成法」「国語表現」の二科目を提供していたが、これらは「思考と表現」領域の選択科目として新たに位置づけられることになった。また、「思考と表現」領域では、全学部の必修科目として「思考と表現」という科目を新たに開設し、現在、国文学科卒業生二名を含む特任助教七名の体制で、この科目を運営している。

 本日の実践報告では、この「思考と表現」科目の実際をご報告いただき、その狙いを共有するとともに、「文章構成法」「国語表現」科目との連携を視野に入れながら、今後の課題について考えていきたい。

 上智大学国文学会の会員には、日頃、中等教育・高等教育の現場において、ライティング教育に携わる者も多い。また、国文学科学部生、国文学専攻大学院生の中には、将来、この種の教育に関わる者も多いと期待される。質疑応答を通じて、大学におけるライティング教育の将来について考える機会としたい。

上智大学国文学会2023年度夏季大会が開催されました

7月1日(土)、2019年度冬季大会以来となる対面での大会が開催されました。

2本の研究発表に続いて行われたシンポジウム「源氏物語の表現の達成」では、駒沢大学名誉教授の石井公成氏、東京大学名誉教授の藤原克己氏をお招きして、仏典・漢籍から観た源氏物語の表現についてご発表いただきました。源氏物語の表現をめぐる多角的な分析に、参加していた多くの学部生も研究の奥深さを感じたようです。

2023年度冬季大会発表者募集

次回大会は2024年1月20日(土)に開催予定です。研究発表者を募集いたします。

発表希望者は下記を記入の上、10月31日(火)23:59までに、氏名・所属・連絡先e-mail・発表題目(仮題可)・発表要旨(200~400字)を添えて、お申し込みください。

・発表予定時間      30分

・応募先         上智大学国文学会 jouchikokubungakkai@yahoo.co.jp 

・理事会にて発表者を決定し、その結果を本人宛てお知らせいたします。

※冬季大会の開催形式については決定しだいお知らせします。

『国文学論集』57 投稿募集

『国文学論集』57 は2024年1月発行予定です。奮って論文をご投稿下さい。

・投稿資格は、国文学会会員とする。

・投稿の枚数は、400字詰め原稿用紙40枚以内(注記・図表等を含む)とし、縦書きを原 則とする。

・原稿用紙に拠らない場合は、用紙はA4判とし、1ページは、縦書きの場合52字×18行、横書きの場合36字×26行(ページあたり936字)とし、17ページ以内とする。必ず各ページにノンブル(ページ番号)を付す事。

・完全原稿とし、未発表論文(口頭発表を除く)に限る。

・提出先 上智大学国文学会(メールにファイル添付のこと)  jouchikokubungakkai@yahoo.co.jp        

・審査は、理事会のもと、複数の専門家の査読のうえ、採否を決定する。

・採否にかかわらず、応募論文は返却しない。

・論文掲載者には、掲載誌2部、抜刷40部を贈呈する。

締切:2023年9月12日

上智大学国文学会2023年度夏季大会案内

大会は予定通り開催されました。

日時:2023年7月1日(土)13:00~

場所:上智大学7号館14階特別会議室

[研究発表]13:00~

『方丈記』五大災厄の章段の語りの性格―連語「かとよ」から考える、『大鏡』との関係―             

 上智大学文学研究科国文学専攻前期課程 小山咲也香

藤原定家『拾遺愚草』釈教「向かはれよ」詠について

 ノートルダム清心女子大学准教授 星野 佳之

[シンポジウム]14:35~

テーマ 「源氏物語の表現の達成」

本廣 陽子(上智大学文学部教授)「複合動詞から観た源氏物語の表現」

石井 公成(駒澤大学名誉教授) 「仏典から観た源氏物語の表現」

藤原 克己(東京大学名誉教授) 「漢籍から観た源氏物語の表現」  

司会    瀬間 正之(上智大学文学部教授)

[上智大学国文奨学金授与式]

[総会]17:20~

[懇親会]18:00~ 会場:上智大学2号館5階教職員食堂

卒業生の方のご参加を歓迎します。
参加を希望される方は、6月26日までにご連絡ください。

国文学会事務局 [電話・FAX]03-3238-3637    jouchikokubungakkai@yahoo.co.jp 

上智大学国文学会2023年度夏季大会 研究発表・シンポジウム要旨

研究発表要旨

『方丈記』五大災厄の章段の語りの性格 ―連語「かとよ」から考える、『大鏡』との関係―

上智大学文学研究科国文学専攻前期課程  小山咲也香

 『方丈記』では連語「かとよ」が、古本系統の大福光寺本で二例、前田家本で三例、 流布本系統の一条兼良本および嵯峨本で四例用いられている。この「かとよ」という語は、『方丈記』の時代には、散文において用例の少ない語であった。また、『方丈記』における「かとよ」は全てが、前半部の五大災厄の章に使用箇所が偏っているうえ、例外なく時を表わす語に付属する形で用いられている。短編である『方丈記』で、二例から四例確認されること、更にその使用形式が全て同一であること。これらに作者の意図を見出すべきではないだろうか。

 本発表では、和歌・歌合判詞・散文における「かとよ」の用例を確認しつつ、『方丈記』において「かとよ」がどのような意味を持つのか、作者がこの語を用いた意図とは何か、考えていきたい。また、用例を調査するなかで、『方丈記』が『大鏡』の文体を踏まえている可能性が見えてきたため、二作品の関係性についても検討を行う。

藤原定家『拾遺愚草』釈教「向かはれよ」詠について

ノートルダム清心女子大学准教授     星野 佳之

 藤原定家『拾遺愚草』雑・釈教所収の「母の周忌に法華経六部みづからかきたてまつりて供養せし一部の表紙にゑにかかせし歌」八首(二七五四~六一)について考察を試みる。

 法華経各一巻に一首を宛がって詠まれたこの八首の内、七巻「向かはれよ木の葉しぐれし冬の夜をはぐくみたてし埋火のもと」については、久保田淳が初句を「報いとなる」という自動詞「ムカハル」の命令形、「埋み火のもと」を詠者定家を育てた母の膝下と捉えて「母への報恩となるように」と解釈したのが通説である。

 これに対し、五句は法華経七巻「薬王菩薩本事品」の「如寒者得火」を踏まえ、初句を「移動動詞ムカフ+尊敬ル」と取って「祖母のもとに往かれよ」と母に呼び掛けた歌という試案を発表した(和歌文学会 令和四年一二月例会)が、その際「他の七首全てに法華経各巻との対応が見出せるか」などの課題が残った。今回改めて考察し、可能であれば八首の構成の理解に及びたい。

 

シンポジウム「源氏物語の表現の達成」趣旨

 物語文学史上、卓越した文学的達成を遂げた源氏物語は、表現の面でもそれ以前の作品とは一線を画し、独自の高度な発展を遂げている。源氏物語は、それ以前の和漢の多くの文学作品や仏教など、様々な要素を取り込み、それを作品内部で変容させて、新たなる作品世界を形成した。その過程で、新しい表現方法が工夫され、新しい言葉が用いられ、源氏以前には到達出来なかった物語表現が生み出されていくことになる。

 本シンポジウムは、漢籍との関わり、仏典との関わり、複合動詞といったそれぞれの方面から、源氏物語の表現を分析し、議論を通して、源氏物語の成し得た表現の達成を考えたい。

上智大学国文学会入会案内

 上智大学国文学会は国文学科卒業生、大学院生、関係教員等によって組織されている学会です。

 国文学・国語学・漢文学の研究を深めるとともに、会員相互の親睦を図ることを目的としており、500名を超える会員がおります。

 当会は、ソフィア会国文学科同窓会とともに同窓会の役割も果たしており、卒業生と繋がるために、年2回の国文学会開催時には懇親会を開催し、卒業生同士の親交を深める機会を設けております。

 同窓生として、国文学科の発展に向けてぜひともご参加くださいますよう、お願いいたします。

 [主な活動]

 ・国文学会大会(7月・1月)    

  会員の研究発表  及び  講演、シンポジウム など

・「国文学論集」刊行(年1回)       

  会員の論文掲載(公募) 博士論文・修士論文・卒業論文題目掲載

・国文学会会員名簿発行(7月)隔年発行

・会員通信の発行(年数回)

・学会ホームページに学会活動・ニュース等を掲載

[入会手続]

  jouchikokubungakkai@yahoo.co.jp までご連絡ください。その際、学卒年と在学中のお名前もお書き添えください。

[会費納入]

  年度会費3,000円については、各人に送付いたします郵便振替用紙にて納入あるいは郵便振込でお願いいたします。

上智大学国文学会規約

第一条  本会は「上智大学国文学会」と称する。

第二条  本会は、国文学・国語学・漢文学の研究とその交流に努め、会員相互の親睦を図ることを目的とする。

第三条  本会は、上智大学国文学科の関係教員および卒業生、大学院生、並びに入会を希望する者で理事会の承認を得た者を以て会員とする。学生は準会員とする。

第四条  本会は毎年一回総会を開く。

第五条  本会は左記の事業を行う。

一、研究発表会の開催

二、国文学論集の刊行

三、ホームページの維持

四、その他、親睦会・講演会など本会の目的を達成するために必要な事業

第六条  本会には左記の役員をおく。

一、会長      一名

二、理事    若干名

三、評議員  若干名

四、幹事    若干名

五、会計監査  二名

役員の任期は二か年とする。ただし、重任を妨げない。

第七条  会長は、理事会の推薦に基づき、総会の承認を得て決定する。

会長は本会を代表する。

第八条  理事は左記により定める。

一、国文学科の在職者の互選

二、会長の委嘱

理事は理事会を構成し、会長を補佐して事業の立案並びに会の運営に当たる。

第九条  評議員は、会長の推薦に基づき、総会の承認を得て決定し、会長の諮問に応じて必要な事項を評議する。

第十条  幹事は会長が会員の中から委嘱し、会計・編集その他の専門の業務に当たる。

第十一条 会計監査は、理事会の推薦に基づき、総会の承認を得て決定する。

第十二条 会長は必要に応じて委員会を設けることができる。

第十三条 本会の経費は会費、寄付金その他の収入を以てこれにあてる。

第十四条 本会の入会金は二千円、会費は三千円(準会員は二千円)とする。

     但し、卒業年次入会の場合は入会金を免除する。

第十五条 本会の会計年度は毎年四月一日に始まり、翌年三月三十一日に終わる。

理事会は総会において毎年度決算報告を行う。

第十六条 本会の規約改正は理事会の発議を経て、総会の承認を以て行われる。

付則   本会は事務局を、千代田区紀尾井町七番一号  上智大学国文学科事務室におく。

昭和六十年四月一日より施行

平成二年七月七日改正

平成十四年七月六日改正

平成二十四年七月七日改正

平成二十九年七月一日改正

名誉会員推薦内規

一、次の者を理事会の承認を得て、名誉会員に推薦する。

二、専任教員として上智大学で定年を迎えた者。

三、会員のうち七十歳以上の者で、次のいずれかの項目に該当する者。

 (一)本会の役員に十年以上在任した者。

 (二)本会の事業に多大の貢献をした者。

四、名誉会員は、会費納入の義務を免除する。

(昭和六十三年七月九日より施行)

(平成二十四年七月七日改正)       

準会員取扱内規

一、単年度会員とする。(会員名簿には記載しない。)

二、国文学論集の配布をうける。

三、大会への参加が認められる。

四、論集への論文の掲載が認められる。

   (但し、国文学科指導教授の推薦を必要とする。)

(平成二年七月七日より施行)

(平成二十九年七月一日改正)