【重要・緊急】上智大学国文学会2022年度夏季大会について

 大会は、予定通り開催致しました。

 上智大学国文学会2022年度夏季大会の発表資料のURL、ZoomのIDとパスワード等は、学会ホームページ上の申し込みフォームに御記載のe-mail宛に、7月7日頃お知らせすることになっておりましたが、やむ得ない事情により、そのような形でのお知らせができなくなりました。誠に申し訳ございません。

 本日、本学会会員のうち、メールアドレスの分かる方には、e-mailにて発表資料のURL、ZoomのIDとパスワード等をお知らせしたところですが、参加ご希望の方で、会員ではない方、あるいは会員でもe-mail未着の方は、お手数ですが上智大学国文学会事務局(jouchikokubungakkai@yahoo.co.jp)まで、e-mailにてお問い合わせ下さい。

 ご迷惑をおかけしますが、なにとぞよろしくお願い申し上げます。 

上智大学国文学会2022年度夏季大会案内

大会は、予定通り開催致しました。

今年度夏季大会を次の様に開催します。
日時:2022年7月9日(土)13:30~
会場:Zoom オンライン会議
参加申込み: 次のオンラインフォームに記入の上、御送信下さい。
https://docs.google.com/forms/d/1oLL-BuVzDCSJkrnaXWYeXJSPurTk1dANleykGCyxmLQ/
7月7日頃に、発表資料のURL、ZoomのIDとパスワード等を、御記載のe-mail宛にお送りします。

【重要・緊急】上智大学国文学会2022年度夏季大会について – Sophia Kokubun 上智大学国文学会 (sophia-kokubun.jp)

当日のタイムテーブルは次の通りです。
1. 13:40~14:20 研究発表(質疑応答含む、以下同じ)
    菅のの香    中古・中世における複合辞の文法機能――「ニオイテハ」「ニツケテ」を中心に

2.  14:30~15:10 研究発表
    星野佳之  助詞シの変遷について   

3. 15:20~16:00 研究発表
    本廣陽子  『源氏物語』の複合動詞

4.  16:10~ 総会
 ・役員(会長・評議員・ホームページ担当)の改選  
 ・2021年度決算
 ・2022年度事業計画・予算案
 ・上智大学国文奨学金授与式

発表要旨は、上智大学国文学会2022年度夏季大会 発表要旨を御覧下さい。

上智大学国文学会2022年度夏季大会 発表要旨

中古・中世における複合辞の文法機能 ―「ニオイテハ」「ニツケテ」を中心に

女子聖学院中学高等学校国語科特任教諭  菅 のの香

 「ニツイテ」・「ニヨッテ」といったいわゆる「複合辞」は、現代語を中心に研究が進められてきた。本発表では、中古・中世の古典語において、「複合辞」がどのような文法機能を持ち、文章中でどのような役割を担っていたかを明らかにしたい。
 調査対象は、現代語で「複合辞」等とされている詞と形態が一致するものと、ロドリゲス『日本大文典』においてそれらの詞と同列に扱われているものとする。それらの役割は、構文上の区別が可能である。連用修飾句を形成する複合辞は、準体を承けることができるが、題目提示の複合辞は、必ず体言を上接し、準体を承けることができない。また、それらの役割と出現状況は文体差に左右される。題目提示の複合辞について、中古では、「ニツケテ」が和文に「ニオイテハ」が和漢混淆文に用いられるといった棲み分けが見られるのに対し、中世以降の口語体では、「ニオイテハ」のみがその役割を担っている。

助詞シの変遷について

ノートルダム清心女子大学准教授  星野 佳之

 助詞シについては、①「主節内での単独用法」(奈良の明日香を見らくシ良しも、万葉99)は上代を限りにほぼ失われ、中古以降②「主節内で他の助詞と複合する用法」(汝をシゾあはれとは思ふ、古今904)」か、③「順接条件節内に立つ用法」(植ゑシ植ゑば秋なき時や咲かざらむ、古今268)のいずれかに収斂していくことが『あゆひ抄』以来明らかとされている。
 その上で研究史は「助詞「し」の説―係機能の周辺―」川端善明(1962)や『日本語文法大辞典』「し」の項、野村剛史(2001)など、構文的性質の解明に重点が置かれてきたが、近年、形容詞文に立つシの表現内容を「対象の像の明瞭化」と限定的に記述する「助詞シと形容詞文」栗田岳(2020)が発表された。シの目立たない表現価を改めて問う重要な試みとしてこれを踏まえつつ、本発表では「かつがつも最前立てる兄をシ枕かむ」(神武記)等についてより具体的な記述を試み、ここからシ衰退の過程を再度検討し直したい。

『源氏物語』の複合動詞

上智大学文学部准教授  本廣 陽子

 『源氏物語』の文章は、一つの文や一つの言葉に、より多くの内容や様々なニュアンスが込められ表現されるという特徴を持つ。そのような文章の一角を担うのが複合語であり、この使用によって意味内容を圧縮した文学的表現が可能になっていることが従来指摘されてきた。加えて、『源氏物語』の複合語の背景に、漢文の訓読語や歌語の存在があることが指摘されている。一方で、『源氏物語』において、複合語が訓読語や和歌とどのように関わっているのかを具体的に明らかにしたものは少ない。
 本発表では複合語の中でも複合動詞を取り上げたい。そして、『源氏物語』の複合動詞を特に和歌との関係において考察することを通して、『源氏物語』における複合動詞の在り方の一端を明らかにしたい。

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上智大学国文学会2021年度冬季大会 発表要旨

「願い」の表現とイエズス会の文法組織

上智大学大学院文学研究科国文学専攻博士後期課程  黒川 茉莉

 日本語動詞に希求法(optativus)を立てる理由は、イエズス会の日本語文法の嚆矢である天草版「ラテン文典」(1594)では、十分に説明されていない。天草版が依拠したAlvares等の当時のラテン文法に於いても、接続法(conjunctivus)と実質同形の希求法は、その別立ての理由付けに苦心するほどで、イエズス会文法の日本語希求法は精査を要する。
 ロドリゲス「日本大文典」(1604~1608)は、希求法接辞(カシ、ガナ、モノヲ等)を動詞活用から切り離している。本発表では、日本語の希求法を、本来の希求法という動詞の「法」(mood)から離脱させるロドリゲスの試みを、「日本語の『願い』は過去に及ばない」(15丁オモテ)という、日本語の「願い」表現に対するロドリゲスの理解と関連させて論じ、あわせてキリシタン対訳辞書・対訳文献での「願い」の日本語表現を再考する。

『天草版平家物語』における句読法とコロンの機能について

青山学院高等部非常勤講師  岩澤 克

 『天草版平家物語』の本文を原典と対照すると、原典の地の文において文末であった箇所を非文末の形に改める長文化が確認される。また、長文化が生じずに短文のままである文末にはピリオドではなく、コロンを用いる例が見られる。文長の調整やコロンの使用は日本語学習の教材として編纂された『天草版平家物語』の講読において重要な役割を果たしたものと考えられる。その観点から、当時の『イエズス会学事規定』を踏まえ、イエズス会の言語学習において文長に関する基準が存在し、その規範に基づいて『天草版平家物語』の編纂が為されていたであろうことを論じる。

女三宮の「かたみ」の猫

上智大学大学院文学研究科国文学専攻博士後期課程  藤田 亜美

 『源氏物語』には様々な身代わりが登場する。その中でも、柏木によって「恋ひわぶる人のかたみ」とされる女三宮の猫はとりわけ異質な存在であると言えるのではないだろうか。
 身代わりとしての女三宮の猫が特異であると考え得る理由の一つとして、身代わりの猫と本体である女三宮に同じ形容表現が用いられることが挙げられる。女三宮と猫に共通して「らうたげなり」「なつかし」といった形容表現が用いられていることは、先行研究において指摘されてきた通りである。しかし、『源氏物語』の他の身代わりの場合と比較してみると、身代わりとその本体を同一の表現で形容することは必ずしも一般的であるとは言い難い。そこで、本発表では、女三宮と猫の形容表現が共通することの意義を考察する。そのうえで、『源氏物語』の種々の身代わりの中で、女三宮の猫をどのように位置づけることができるのかについても考えたい。

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上智大学国文学会2021年度冬季大会案内

大会は、予定通り開催致しました。

今年度冬季大会を次の様に開催します。
日時:2022年1月22日(土)13:30~17:00
会場:Zoom オンライン会議
参加申込み: 次のオンラインフォームに記入の上、御送信下さい。
https://docs.google.com/forms/d/1juEJ63roiHwVjS73hjt7-Zz11RNdv6p0z8iOOY0JI9s/
1月20日頃に、発表資料のURL、ZoomのIDとパスワード等を、御記載のe-mail
宛にお送りします。

2022年1月22日13:15現在で御登録済の皆様には、既に、発表資料のURL、ZoomのIDとパスワードを、お送りしました。未着の場合、「迷惑メールフォルダ」などを念のため御確認下さい。

当日のタイムテーブルは次の通りです。
1. 13:40~14:20 研究発表(質疑応答含む、以下同じ)
    黒川茉莉   「願い」の表現とイエズス会の文法組織

2.  14:20~15:00 研究発表
    岩澤克    『天草版平家物語』における句読法とコロンの機能について   

3. 15:10~15:50 研究発表
    藤田亜美  女三宮の「かたみ」の猫

4.  16:00~17:00  講演
  小林幸夫 志賀直哉と島崎藤村 ―比較作家現象研究の可能性

発表要旨は、上智大学国文学会2021年度冬季大会 発表要旨を御覧下さい。


17:15~18:15  懇親会(別の zoom IDで)

懇親会(Zoom)は、17:15~18:15 に Zoomにて行ないます。
参加申込み: 次のオンラインフォームに記入の上、御送信下さい。
https://docs.google.com/forms/d/1yXwoQ6jo4edhLYony24oQuG_w3AnNSUgidw3J5dCG-Y
1月21日頃に、ZoomのIDとパスワード等を、御記載のe-mail 宛にお送りします。

上智大学国文学会2021年度夏季大会 発表要旨集

許六俳文の出発点――『五老文集』所収「五老井記」草稿の分析      

砂田 歩

 「五老井記」は、『本朝文選』(宝永三年〔1706〕刊)などに所収される、森川許六(1656~1715)の俳文である。この俳文は、許六手稿『五老文集』に草稿が残っており、その推敲過程をたどることができる。本発表では、その推敲過程の分析を通して、許六がどのような意識をもって「五老井記」を書いたのかを検証する。許六は『本朝文選』の編者であるなど、俳文史において重要な人物であるためである。
 推敲過程の分析によって明らかにするのは、⑴松尾芭蕉(1644~1694)の俳文「幻住庵記」との対応が試みられていたこと、⑵和文脈と漢文脈のバランスが重視されていたこと、以上の二点である。そこから、従来許六と対立的にとらえられることのあった、芭蕉や各務支考(1665~1731)との俳文観の共通性を論じる。
 また、『五老文集』の成立の時期などから、芭蕉がその添削を行った可能性についてもふれる。

享保期艶書小説の教訓性とその背景―『当流雲のかけはし』を中心に―   

岡部祐佳

 『当流雲のかけはし』(享保四年〈1719〉刊)は、女筆手本の趣向や二十一代集および『源氏物語』に関する知識を取り入れるなど、啓蒙的側面を有する艶書小説である。この本書の啓蒙性は、主たる読者層であった上~中層町人の子女の需要を考慮したものであった。しかし、子女への教育という点からみれば、恋愛すなわち好色を題材とする艶書小説は、本来忌避すべきものといえよう。本書以前の艶書小説は、この倫理と好色の葛藤を仏教的価値観によって克服しようとするものが多かった。ところが本作は、作中において中世的な出家遁世を揶揄し、当代町人社会という現実世界を主体的に生きる女性の姿を描いている。
 本発表では、享保期における女子教育の潮流を踏まえつつ、本書の教訓性について検討する。また、それ以前に刊行された艶書小説との比較を通して、近世期艶書小説史における本作の位置づけについて、仮説を提示したい。

日本書紀の「亦」と「又」                       

李 明月

 藤原照等氏は古事記に用いられている「亦・又」について、両者は漢字原義により使い分けされていることを明らかにした。このような使い分けが日本書紀においても見られるか、また述作者が異なる日本書紀において使い分け方に差があるかを調査し報告する。
 「亦」「又」の副詞用法・接続詞用法それぞれが文頭・句頭・文中に用いられている用例を統計的に処理した。文頭以外に「又」が用いられている巻について「亦」「又」の用例を分析し、漢籍にない接続詞用法の「亦」がβ群のみに用いられていることを明らかにした。しかし、「又」が文頭以外に用いられる巻はすべて使い分けされており、誤用である接続詞の「亦」も「もまた」という漢字原義にから転用されたものと見られ、すべての巻において両者は漢字原義を意識し使い分けされていることが判明した。

出雲国風土記における山川原野の描写について 

             宮川 優

 出雲国風土記の記述が他の古風土記のそれと比較して整然としていること、各郡の前半部と後半部とで記述方法に違いがみられること、山や川といった自然を描写する地誌的説明はその後半部に置かれ、前半部に比して漢文を志向しているものの、その多くを類型表現が占めること、その類型表現は『山海経』や『水経注』等の漢籍に学んだ可能性があることなどが先行研究において指摘されている。
 眼前に広がる自然の様子をどのように記せばそれを見ぬ人々に伝わるか、漢籍を範としながら、その利用は文飾のためではなく、実景の簡素な描写や、全巻を通じた描写に関する方針の可能な限りの統一といったことに重きを置いて行われたと推察される。
 本発表では、出雲国風土記において山川原野の描写に用いられた類型表現を網羅的に眺め、漢籍におけるそれらの用例分布をこれまでに指摘されたものも含めて再確認することによって、その表現に見られる工夫の跡を辿りたい。

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上智大学国文学会2021年度夏季大会案内

大会は、予定通り開催致しました。

今年度夏季大会を次の様に開催します。
日時:2021年7月10日(土)13:30~18:00
会場:Zoom オンライン会議
参加申込み: 次のオンラインフォームに記入の上、御送信下さい。
https://docs.google.com/forms/d/1ye0M4Md6FbEVVAAlPfhUUJnsRLizHtGeN4FyjVl40oo/
7月8日頃に、発表資料のURL、ZoomのIDとパスワード等を、御記載のe-mail
宛にお送りします。

発表者と発表要旨:こちらのページを御覧下さい。

この他に、会員総会、土田賞授賞式・上智大学国文奨学金授与式を行ないます。

懇親会は、行ないません。

2020年度冬季大会 発表要旨

『日本書紀』と六朝口語 /石璽彦

『日本書紀』は周知の通り、漢文で書かれた日本最初の正史である。しかしその漢文の表現は、古来から不自然だとする指摘もある。また、その表現に多くの当時の中国口語が含まれることは小島憲之氏・瀬間正之氏・唐煒氏などにより、多くの先行研究で提示されており、『日本書紀』の表現形成で大きな役割を担うことが証明されている。この中に、伝来した漢訳仏典の影響が多いことが注目されており、多くの論述もその視点で論証されている。しかし、『日本書紀』の「地の文」・「会話文」という視点から中国口語の用法を考察する方法は未だまだ採られていない。

したがって、今回の発表では、『日本書紀』全文の中国口語用例を摘出し、「地の文」・「一重会話文」・「二重会話文」という三つの種類を分類し、テーブル式で整理する。データを集計し、分布・使用傾向・偏在などを一層明瞭にすることを目指したい。

キリシタン版『サントスの御作業 内抜書』「言葉の和らげ」の掲載語彙 / 中野遙

キリシタン版『サントスの御作業 内抜書』(1591)には、本文中の分別しにくい語を説明した「言葉の和らげ」が付されているが、立項されている語の全てが本文中に見える訳ではない。本文不在の語は同音異字語が多く、また、漢字表記を持つ見出しであっても、その表記を示唆するルビが付されていない場合が多い。本文不在の語が同音異字語に多いのは『ヒイデスの導師』(1592)の「言葉の和らげ」などに於いても顕著であり、編纂側も本文中の正確な漢字表記を把握しないままに語釈を付したためと考えられる。先行研究の通り、「言葉の和らげ」に見られる語義は原則として本文に依存したものであるが、一方で、本文文脈から切り離されて語釈を付す作業が行われ、同音異字語を本文文脈に即して選択する事が出来なかった可能性を指摘する。

また、「言葉の和らげ」間での収録語彙の比較から、『サントスの御作業』「言葉の和らげ」掲載語彙の性格を明らかにする。

近代日本における廣瀬武夫漢詩の受容 ~「正気歌」を中心に~ / 笹本玲央奈

明治四十三年、夏目漱石は「文芸とヒロイック」「艇長の遺書と中佐の詩」と題する評論を発表した。前者において、漱石は同年の海軍第六潜水艇沈没事故で殉職した佐久間勉大尉の遺書に言及し、後者では、明治三十七年に日露戦争で戦死した廣瀬武夫中佐の漢詩について、佐久間大尉の遺書と比較しつつ批判している。

周知のように、漱石の漢詩は高く評価されているが、漱石がなぜ廣瀬の詩を批判したのかという点については十分に解明されていない。私見では、漱石は西洋文学を規範とする自身の文学論に基づいて廣瀬の漢詩を論じており、それは後の「則天去私」とも関わる問題である。一方で、漱石の批判にも関わらず、廣瀬の漢詩はその後も現代に至るまで多くの詞華集に収録され、詩吟にもうたわれて国民に親しまれてきた。そのことは何を意味するのか。本発表では、廣瀬武夫漢詩の受容について、漢詩の近代化をめぐる議論や戦争との関わりも視野に考察したい。

慈円「四十八願三首和歌」をめぐって / 山本章博

慈円の私家集『拾玉集』第四(4196〜4199番)に、「上人勧進講四十八願之席同詠三首和歌」と題して「阿弥陀四十八願第六」「月」「無常」を詠んだ三首和歌がある。これについては、同じ組題である「家隆家四十八願勧進和歌」(藤原家隆『玉吟集』所収)と同時のものであった可能性について、山本一氏が和歌文学大系『拾玉集』の脚注においてわずかに言及するのみで、これまで特に注目されることのなかった作品である。

本発表では、この三首和歌と「家隆家四十八願勧進和歌」との関係について改めて検討し、さらに草稿を含めた四首の和歌表現について分析する。その結果として、嘉禄元年(1225年)、死を目前にした生涯最後の和歌で、西行歌からの影響を受けたものであることを指摘する。

平成30年度冬季大会の開催

上智大学国文学会

標記は、2019年1月12日(土)、予定通り開催致しました。

小雪の舞う中でしたが、学会員、国文学科在学生、一般の方など多くの方に御参加頂けて盛況の会となりました。

平成30年度冬季大会 要旨

上智大学国文学会 平成30年度冬季大会要旨

標記は、次の通りです。

大会プログラムこちらです。

平成三十年度冬季大会発表要旨

芥川龍之介「玄鶴山房」論―「看護婦」「ゴム印」の同時代表象をめぐって―  木村 素子

 

芥川龍之介晩年の作品である「玄鶴山房」(昭和二年)は、芥川自身が書簡において提示した「新時代」意識を探る考察が中心に行われてきた。その際、作中に登場するリープクネヒトの『追憶録』に描かれた家族と作品内の家族との比較や、「看護婦」甲野とは何か、また、「ゴム印の特許」と玄鶴との関係などが問題として追究された。

本発表では、それらの論を踏まえ、「看護婦」と「ゴム印」に焦点を合わせて考察を試みる。「看護婦」という職業は、大正四年から有資格者のみが就業できる規則が整えられたにも関わらず、世間からは軽視されていたという当時の社会状況を踏まえることや、「ゴム印」が同時代においていかなる状況にあったのかを考えることによって見えてくる作品の問題性を検討することとする。

 

夢〉を視る《神経》―谷崎潤一郎「柳湯の事件」をめぐる考察         村山 麗

 

谷崎潤一郎「柳湯の事件」(大正七年十月)は、長年極度の「神経衰弱」を患う絵描きのKが、恋人の瑠璃子を「ヒステリー」に罹っていると思い込み、その恐怖から見た「幻覚」によって引き起こした殺人事件とその自白を描いた作品である。先行研究では、その神経病表象を取り上げ、当時の精神異常者をめぐる法制度との関係の追究や、雑誌『変態心理』等同時代のメディアにおける神経病言説に基づく分析がなされている。これらの論は、作品をめぐる同時代資料を提出した点において注目される。

しかし、本発表では作品における「神経衰弱」が、「幻覚」を視るという特徴を持っている点に着目し、この作品が独自の《神経病》表象を有していることを明らかにし、文学における同表象の史的展開の上に位置づけたい。

 

シンポジウム概要

古典学と仏教学                          

瀬間 正之

仏教を措いて古典文学を語ることは不可能であろう。上代文学においては、仏教思想の影響は軽微とは言え、仏典を利用した表現は多々指摘されている。また、日本霊異記をはじめとする仏教説話集は、その重要な編纂意図の一つにまさしく唱導・伝道があった。中古となれば、仏教は民衆へ浸透を見せ始め、「宿世」「罪」は源氏物語の重要な題材となる。中世以降、平家物語・徒然草・方丈記などはまさしく仏教なしに語ることは出来ない。以後多くの古典文学が仏教の影響下にあることは言うまでもない。

また、古典研究への影響も見逃せない。一条兼良の古典研究の背景には、宋学はもちろんのこと、禅学の深い造詣が認められる。客観的方法による古典研究もまた悉曇学の研究方法を学んだ阿闍梨・契沖の創始になることは周知の通りである。

今回のシンポジウムは、仏教学研究者と古典文学研究者を招き、仏教学研究者から観た古典文学、古典文学研究者から観た仏教をそれぞれ語ってもらい、その後の討論の糧としたい。