上智大学国文学会2025年度冬季大会開催のご案内

 2025年度の冬季大会を下記の要領にて開催いたします。今年度の冬季大会は、瀬間正之教授の退休記念大会として対面で行います。研究発表に加え、瀬間教授のご講演や懇親会も予定しておりますので、どうぞ奮ってご参集ください。

 2025年12月       

             上智大学国文学会会長   服部 隆

              

             記 

【日時】  2026年1月24日(土) 午後1時30分~

【場所】  上智大学6号館3階301教室

[第一部 研究発表](午後1時35分~) *別紙に「発表要旨」を記載

 〇『長明集』の表現形成 ―源俊頼の受容を中心に― 

 上智大学国文学専攻博士後期課程  小山咲也香

 〇正宗白鳥「何処へ」と明治四〇年前後の描写論

 上智大学国文学専攻博士後期課程   蒲谷 萌

 〇トゥールーズ図書館新出資料のキリシタン版『日葡辞書』に関連する資料群について

 ―日葡辞書補遺篇草稿と日本語語彙集手稿―

 上智大学基盤教育センター特任助教   中野 遙

[第二部 講演](午後4時~)     

 上代を研究するということ ―その基盤と方法―

 上智大学文学部教授   瀬間 正之

       

[懇親会](午後6時~)  

〔会場〕 上智大学2号館5階 教職員食堂   〔会費〕 5000円

 

*卒業生の集う機会として、懇親会からの出席も大歓迎です。

*大会準備と名簿作成の都合上、1月15日(木)までに申込葉書をお送りください。

*学会費未納の方はできるだけお早目にお願いいたします。また、昨今の諸物価高騰の影響を学会も受けております。ご寄付等のご協力もいただけますと幸いです。

ゆうちょ銀行  〇一九(ゼロイチキュウ)店(019)当座 0075907  上智大学国文学会

お名前と卒業年、会費・ご寄付の別をお書きください。

国文学会事務局 [電話・FAX]03-3238-3637 jouchikokubungakkai@yahoo.co.jp

上智大学国文学会2025年度冬季大会研究発表要旨

『長明集』の表現形成 ―源俊頼の受容を中心に―                小山咲也香

 鴨長明が手掛けた作品として著名なものは随筆『方丈記』あるいは仏教説話集『発心集』であるが、彼の文学の出発点は散文ではなく和歌であった。ところが『方丈記』や『発心集』などの散文作品と比較すると、彼の和歌については研究が進んでいるとは言うことができず、青年期に自撰された私家集『長明集』についても、漠然とした特徴が指摘されるに留まっている。本発表では、『長明集』所収の一〇五首の和歌の調査を通して、習作期の長明がどのような歌人、あるいはどのような歌集から表現を取り入れたのか、その和歌表現がいかに形成されたのか、考察を行なっていく。長明の和歌の師である俊恵からの影響が色濃いことは従来指摘されているが、俊恵の影響が認められる和歌の中には、未だ指摘されていないものも存在しており、さらに検討の余地がある。これに加えて、俊恵の父である源俊頼からの影響についても、本発表で明らかにしていきたい。

正宗白鳥「何処へ」と明治四〇年前後の描写論                  蒲谷 萌

 正宗白鳥「何処へ」は、自然主義の代表的作品として位置付けられている。先行研究では、旧世代への批判性が評価されている。一方で、「何処へ」の主人公は、旧世代的価値のみならず、同時期の文壇において地位を持っていた表現についても批判的な態度を取っている。そうした記述には、旧世代に向けられた批判とは異なる意義を想定できる。こうした問題意識を前提に本発表では、明治四〇年前後の文学論・描写論との関係から、正宗白鳥「何処へ」の意義を検討する。

     

トゥールーズ図書館新出資料のキリシタン版『日葡辞書』に関連する資料群について

―日葡辞書補遺篇草稿と日本語語彙集手稿―

中野 遙

 二〇二四年にフランスのトゥールーズ図書館(Bibliothèque d’étude et du patrimoine)で新たに発見された断簡類の中には、キリシタン版『日葡辞書』(一六〇三・一六〇四)に関連する資料と目されるものが含まれている。日葡辞書補遺篇版本の直接的な原稿にあたる資料と考えられる日葡辞書補遺篇草稿と、日葡辞書の前に成立していたと推定される日本語語彙集手稿である。本発表では、これまで明らかにされてきた、日葡辞書に関わるトゥールーズ図書館新出資料についての情報を整理する。

 そのうえで、特に注記類に着目しながら、日葡辞書補遺篇版本、日葡辞書補遺篇草稿、そして日本語語彙集手稿について対照する。それにより、草稿から版本への編纂の段階について、また、前者二つの資料と比較した時の語彙集手稿の特徴を指摘する。語彙集手稿は記述の内容・方針も、前者二つの資料とは大きく異なっているが、一方で、特殊な位相の見出し語の立項など、日葡辞書版本との関わりが全くない資料とも言い切れないものである。