二〇二二年度 国文学会と大学院の近況
国文学会会長・国文学専攻主任 瀬間正之
大学院の近況:昨年度も、新型コロナウィルス禍に苛まれる一年となりました。それでも対面授業も半分近く行うことはできましたが、大学院の例会はすべてオンラインでした。この三月の修了生は、後期課程はなく、前期課程の四名のみでした。進路は、教職が二名、進学が一名、一般企業が一名という状況です。
本年度は、前期課程に二名、後期課程に一名の新入生を迎えました。前期課程は内部進学一名、他大学からの進学が一名、後期課程は内部進学です。したがって、本年度は、前期課程は六名、後期課程は七名(内、三名は三年以上在籍のため休学予定)となりました。分野別では、上代二名、中古三名、中世一名、近世一名、近代三名、国語学三名です。留学生は、前期課程一名、後期課程二名と計三名です。
国文学会の近況:昨年度も、周知のように、夏季大会・冬季大会ともオンライン開催でした。懇親会が二年も開催されておらず、情報交換の場を持つ新たな試みとして、冬季大会終了後、Zoomによる懇親会を開催しました。司会の長尾先生の配慮で、参加者全員に発言していただけました。
本年度は、夏季大会七月九日、冬季大会一月二一日を予定しています。会場は押さえてありますが、オンライン開催になる可能性は未だ払拭できません。
最後に学会員による著作を紹介します。いずれも木越治先生関係の著作です。木越先生の遺著とも言うべき、木越治著(木越俊介・丸井貴史編)『ひとまずこれにて読み終わり』」(令和三年十月二十五日、文化資源社、一二〇〇円+税)は、残された先生の原稿を弟子の丸井さんとご子息が編集されたもので、至る処に木越節が炸裂するエッセイ集です。
続いて、木越治・丸井貴史編『読まなければなにもはじまらない――いまから古典を〈読む〉ために』(令和三年十一月十五日、文学通信、一九〇〇円+税)は、本会員に関係する部分の目次のみ抜粋します。
第一部 読まなければなにもはじまらない(木越治)
一、はじめに――読まなければなにもはじまらない
二、作者と作品の関係について
三、「語り」への注目
四、御伽草子の「語り」
五、おさんという女――『好色五人女』巻三を読む
第二部 古典を「読む」ためのヒント
二、表記は「読み」にどう関わるか(中野遙)
三、表現の歴史的文脈を掘り起こす――典拠を踏まえた読解の方法(丸井貴史)
五、書簡体小説の魅力と「読み」の可能性(岡部祐佳)
第三部 いま、古典を「読む」ということ
二、古典との向き合い方――中等教育の現場から(中村唯)
第四部 読むことでなにがはじまるのか[座談会](堀切克洋・パリュスあや子・木ノ下裕一・丸井貴史)