2019年度冬季大会 発表要旨

上智大学国文学会 2019年度冬季大会発表要旨

標記は、次の通りです。

大会プログラムはこちらです。

抒情小曲集『思ひ出』のスタイル ―「断章」を中心に
青木 裕里香

北原白秋は生涯を通して詩・短歌・童謡などの領域に活躍の場を見出したが、その中でも詩の領域に目を向けると、詩人としての白秋の評価は曖昧なまま留保されている。白秋の詩人としての出発において注目すべきであるのは、第二詩集『思ひ出』(1911年、東雲堂書店)である。処女詩集は『邪宗門』(1909年、易風社)であるが、『思ひ出』は白秋独自の詩境に達したといわれる作品群であり、近代詩史においても白秋のキャリアの起点となった意味でも重要な詩集である。 本発表では『思ひ出』の中でも「断章」の詩群を中心に、象徴詩の気運が取り巻いていた当時の詩壇において、白秋が選び取った〈抒情小曲〉のスタイルとはいかなるものであったのかを分析する。検討の手がかりとして、「断章」製作期と考えられる時期に、象徴詩とは質が異なる傾向の詩に白秋が用いた〈純感情〉という語について着目しつつ、『思ひ出』が近代詩史において切り拓いた詩的表現について論じる。

浮世草子にみえる艶書の意味と時代性 ―書肆・川勝五郎右衛門刊の作品を中心に―
岡部 祐佳

近世期には、艶書(恋文)とそのやり取りを中心とする艶書小説が多く刊行された。『薄雪物語』『錦木』などはその代表であるが、それらは恋の展開を描く物語としての娯楽性と、和歌や古典知識の教授という啓蒙性を備えるとされてきた。娯楽性と啓蒙性の両立は仮名草子というジャンルの特性ともいえるが、浮世草子にみえる艶書、あるいは浮世草子に分類されている艶書小説にも、同様の意識が備わっていると考えられるものがある。  本発表では以上の問題意識から、浮世草子にみえる艶書について、川勝五郎右衛門が刊行に関わった『新薄雪物語』(正徳六年〈一七一六〉刊)『雲のかけはし』(享保四年〈一七一九〉刊)『薄紅葉』(享保七年〈一七二二〉刊)を中心に考察を行う。具体的には、女子用往来の刊行が相次いだという近世中期の時代性、艶書の散らし書き形式の問題、そして書肆・川勝五郎右衛門の営為との関連について検討することを予定している。

2019年度冬季大会 大会案内

2019年度の冬季大会を次の要領にて開催いたします。今回は研究発表に加えて、本年度をもってご退休になります小林幸夫教授、西澤美仁教授に、記念講演をお願いいたしました。

卒業生の集う場として、懇親会のみのご参加でも構いませんので、どうぞ奮ってご参集下さい。

日時
2020年1月11日(土)13:00~

会場
上智大学 7号館14階特別会議室

研究発表(13:00~)
抒情小曲集『思ひ出』のスタイル―「断章」を中心に
東北大学大学院文学研究科国文学専攻博士前期課程
青木裕里香

浮世草子にみえる艶書の意味と時代性―書肆・川勝五郎右衛門刊の作品を中心に―
大阪大学大学院文学研究科文化表現論専攻博士後期課程
日本学術振興会特別研究員
岡部 祐佳

講演(15:00~)
「吉野山西行庵の成立」再考
上智大学文学部教授
西澤 美仁

講演(16:10~)
近代文学および研究の強み
上智大学文学部教授
小林 幸夫

懇親会(18:00~)
会館主婦プラザエフ 9階スズラン(JR四ツ谷駅麹町口 前)
会費 7000円(学部生3000円)
(当日、会場受付にてお願いいたします。17:30以降にお越し下さい。)

2020年3月をもちまして、永年、本学会を牽引していただいた小林幸夫教授・西澤美仁教授が 本学を退休されます。今回の懇親会は、両教授の今までの御尽力に感謝の意を捧げる場となります。 会員はもちろん会員外の方々も奮って参加していただければ幸いです。 多くの方々のご参集を願っております。

*準備の都合上、12月20日(金)までに出欠のご連絡を願います。

上智大学国文学会 [電話・FAX] 03-3238-3637
jouchikokubungakkai@yahoo.co.jp