学科近況(2018年4月)

国文学科の近況

国文学科長 長尾 直茂

62名(女子学生50名、男子学生12名)の新入生を迎えて、新しい年度がスタートした。新年度が始まるまで入学者が確定せず、三月末のぎりぎりのところまで各大学が定員確保のために鎬を削る昨今に、本学科は歩留まりが好調で補欠合格者を出さずに新入生を迎えることができた。文系学科軽視の風潮の中、にわかに国文学科の人気が上がったとは到底考えられず、今後の傾向を睨みながらの分析が必要となろう。しかし、確かに近来稀なる慶事ではある。

本年度は、近代文学担当の小林幸夫教授が特別契約教授となられた。担当される講義数は限られるため、残りの近代文学関連の講義は本年度着任の新任教員である木村洋准教授にお願いすることとなった。木村先生はまだ三〇代半ばの若手であるが、すでに著書『文学熱の時代 慷慨から煩悶へ』(名古屋大学出版会、二〇一五年)を世に問い、同書によってサントリー学芸賞を受賞するなど正しく新進気鋭の学者として活躍しておられる。ぜひともその〝文学熱〟で本学の学生を熱く導いて行って頂きたい。

残りの学科スタッフに変わりはないが、漢文学担当の福井辰彦准教授が研究休暇で講義を担当されない事が例年とは異なる。福井先生は京都に腰を据えて研究に専心されるとの事。

非常勤講師の先生方に御協力を頂くことは例年通りであるが、古典文学特講と古典文学史を担当頂く予定であった木越治先生には、その逝去によって講義をお願いすることがかなわなくなった。木越先生には本学を御退職の後にも非常勤講師として、学科の講義のみならず、横断プログラムの講義や国文学会の運営等さまざまな面において御助力を忝くした。先生の御好意に甘えて、過重な負担を御掛けすることとなってしまったのでないかとの後悔の念にさいなまれる。すでに体調をくずしておられたのであろう、年末にキャンパスを力なくとぼとぼと歩いておられた先生に挨拶をしたところ、肩をすくめながら「東京の寒さは陰険で嫌いだ」とおっしゃった。先生のこれまでの御尽力に感謝するとともに、心よりの追悼の念を捧げたく思う。