『国文学論集53』 投稿募集

国文学論集53号投稿募集 
国文学論集次号(53号)は、2020年1月発行予定です。
御論文の御投稿をお待ちします。
締切は、2019年9月12日(木) (消印有効)です。
投稿規程は、論文投稿規程又は国文学論集52号を御覧下さい。


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投稿は締め切りました。

2019年度夏季大会 発表要旨

上智大学国文学会 2019年度夏季大会要旨


標記は、次の通りです。


大会プログラムはこちらです。


女三宮・浮舟に対する「らうたし」「らうたげなり」 ―密通・失踪という物語の転換点との関わりに着目して―      藤田 亜美

『源氏物語』において、「らうたし」「らうたげなり」という形容表現は、紫上や宇治の中君をはじめとして、男君から愛される女君に対してよく用いられる傾向がある。『源氏物語』の「らうたし」「らうたげなり」は、男君から女君に対する愛情が垣間見える表現の一つであると言えるだろう。
 『源氏物語』の作中人物の中でも、源氏の正妻である女三宮は四番目に、薫・匂宮の双方から求められる浮舟は三番目に多く「らうたし」「らうたげなり」が用いられている。しかし、女三宮と浮舟は、ともに「らうたし」「らうたげなり」が多用される人物ではありながらも、単純に男君から愛しく思われる女君として描かれているわけではない。
 本発表では、女三宮と浮舟に対する「らうたし」「らうたげなり」という形容表現を一例一例文脈の中で読み解くことによって、これらの表現が密通や失踪という物語の転換点と関わりながら効果的に用いられているさまを明らかにする。

キリシタン版『日葡辞書』「序文」の二重印刷が示す編纂方針について         中野 遙 

キリシタン版『日葡辞書』(1603 長崎刊)の「序文」には、匡郭と活字とが重なって印字されている箇所が見られる。この印字箇所は、諸本によって、左右の僅かなズレが見られ、「序文」が前半(1丁裏8行目まで)と後半(9行目から)と、二度に亘って印刷された事が察せられる。後で印刷されたと考えられる「序文」の後半では、『日葡辞書』編纂上の不備(見出し語配列の混乱、拗長音表記の不統一、訓釈の不徹底、数詞を含む見出し語の欠落)についての言及があり、この記述から、翻って、本来『日葡辞書』が目指した編纂方針を読み取る事が可能となる。
 本発表は、新出のリオ・デ・ジャネイロ本を含む『日葡辞書』現存4本の原本観察と、マニラ本(現所在不明)の写真版の参照に基づき、原本調査による印刷状態の精査が、文献それ自体の性質や編纂の背景を考察・証明する重要な情報を齎し得る事を、調査の実例から示すものである。

上智大学国文学科藏・藤野海南関係資料について                 福井 辰彦

 藤野海南は幕末・明治期の儒者。名は正啓、字は伯廸。伊予松山の人。文政九年(一八二六)生まれ、明治二十一年(一八八八)没。藩校明教館、昌平黌に学んだ後、藩政に参画。維新の際は藩論を恭順に導き、維新後は諸官を歴任した後、修史局編修官となった。その詩文は明治二十四年、『海南遺稿』として刊行された。
 昨年、そのご子孫より本学科に、関係資料約九十点をご寄贈いただいた。今回寄贈された資料には、詩文稿等の自筆資料、書画類、弟・漸の明治二十五年から四十四年に至る日記などが含まれる。
 詳細な整理・研究は今後の課題として、本発表では、特に『海南遺文稿本』、『大日本編年史』(稿本)、旧雨社詩箋等を中心に、資料の概要、研究上の価値などについて報告する。

座談会登壇者主要著作・活動
倉本さおり
「私のおすすめ」(毎日新聞文芸時評)
「ベストセラー街道をゆく!」(週刊新潮)
「倉本さおりの書評系叩き売りラジオBanana」(TBS)

大橋 崇行
『浅草文豪あやかし草紙』(一迅社 メゾン文庫 2019)
『司書のお仕事 お探しの本は何ですか?』(勉誠出版 2018)
『言語と思想の言説 近代文学成立期における山田美妙とその周辺』(笠間書院 2017)

高橋健太郎
『振り向けば、アリストテレス』(柏書房 2018)
『言葉を「武器」にする技術 ローマの賢者キケローが教える説得術』(文響社 2017)
『鬼谷子 100%安全圏から、自分より強い者を言葉で動かす技術』(草思社 2016)

2019年度夏季大会

上智大学国文学会 2019年度夏季大会

標記は、次の通り開催致しました。

発表要旨はこちらです。


日時
2019年7月13日(土)13:30〜

会場
上智大学 7号館14階特別会議室

研究発表(13:30〜)
「女三宮・浮舟に対する「らうたし」「らうたげなり」
―密通・失踪という物語の転換点との関わりに着目して― 」
上智大学大学院博士後期課程 藤田 亜美

「キリシタン版『日葡辞書』「序文」の二重印刷が示す編纂方針について」
上智大学大学院博士後期課程  中野  遙

「上智大学国文学科藏・藤野海南関係資料について」
上智大学文学部准教授  福井 辰彦

座談会(15:50~)
テーマ  卒業生のWriter達
本学本学科の卒業生で著述業に携わっている方々に、著述を始めた契機、その内容や活動について、また、学生時代と現在の仕事との関わりなどを語っていただきます。

司会
小林 洋介(二〇〇一年卒・比治山大学現代文化学部准教授)

登壇者
倉本さおり(二〇〇二年卒・書評家・ライター)

大橋 崇行(二〇〇二年卒・東海学園大学人文学部准教授・作家)

高橋健太郎(二〇〇二年卒・作家・ライター・編集者)


総会(17:30〜)

懇親会(18:00~)
上智大学 2号館5階教職員食堂
会費 4000円(学部生1000円)

卒業生の方の御参加を歓迎します。
参加を希望される方は、7月5日までにご連絡ください。

国文学会事務局 [電話・FAX]03-3238-3637    jouchikokubungakkai@yahoo.co.jp 





「国文学会報特別号 ― 土田將雄先生追悼号」

上智大学国文学会名誉会員の土田將雄先生のご逝去に伴い、「上智大学国文学会報特別号 ― 土田將雄先生追悼号」が発行されました。目次は次の通りです。

目次

「弔辞」                小林幸夫(上智大学教員)

「神父様からのアドバイス」       小田桐弘子(院修)

「この道の果たてに」          渡辺護(岡山大学名誉教授)

「土田先生の思い出」          大森亮尚(古代民俗研究所代表)

「わが母校」              渡辺清美(七二年卒 旧姓 村松)

「土田先生とのワンシーン」       堤てる江(七二年卒 旧姓 大友)

「あのハヤシライスをもう一度食べたい」 藤平和良(七三年卒)

「先生とのお別れ」           湯浅茂雄(実践女子大学文学部教授)

「かき霧らし雨の降る夜をほととぎす」  草野隆(八〇年卒 院修)

「尽きせぬ宿こそ」           加藤良子(七〇年卒 旧姓 益田)

無題                  平林清江(七一年卒 旧姓 比企)

無題                   川木冴子(七一年卒 院修)

「土田先生をお偲びして」         末沢明子(七二年卒 院修)

「土田先生という神父さん」        横山陽(七三年卒 院修)

無題                   渡邊良水(七三年卒 旧姓 柳沢)

「実学としての変体仮名講義」       小柳恵子(七四年卒 旧姓 倉品)

編集後記                 瀬間正之(上智大学教員)

『国文学論集52』の刊行

『国文学論集』第52集を刊行しました。 目次は次の通りです。

〈論文〉

「三条西公条の伊勢物語注釈―源氏物語注釈との関わりを通して―」

本廣 陽子

「芥川龍之介「芋粥」論―身体を超える認識の操作―」

木村 素子


「梁川紅蘭の中晩唐詩受容」

中野 未緒

「キリシタン版『日葡辞書』のラテン語注記の構造について」

中野  遙

「キリシタン版の表紙絵裏の本文の印刷に就て」

豊島 正之

〈平成二十九年度国文学会冬季大会パネル・ディスカッション概要〉

「「日本辞書言海」の解剖 」

平成30年度冬季大会の開催

上智大学国文学会

標記は、2019年1月12日(土)、予定通り開催致しました。

小雪の舞う中でしたが、学会員、国文学科在学生、一般の方など多くの方に御参加頂けて盛況の会となりました。

弔辞

弔辞

 

土田將雄先生、ここに、先生に教えを受けたり、いろいろな場所で先生と出会ったりした人たちが集まりました。一人一人、それぞれの思いを持って集まりました。それは、先生との関わりを確認し、先生ときちんとお別れをしたいとの思いからです。そのうちの一人として、私が僭越ながら、思いを述べさせていただきます。

先生は神父様として、教員として、研究者として、そして教育行政に関わる人として、つまり四つの分野で活躍されました。そのうち私は、教員としての先生と研究者としての先生という二つの面で先生と接することを得ました。

教員としての先生とは、私は上智大学の大学院で教えを受けました。主に中世和歌の、変体仮名で書かれた本文を学びました。ある時、先生は和歌を研究しているのだから歌会をやろうと言い出され、私たちは短歌をつくることになりました。そのうち、雑誌を出そうと言われ、つくりました。私がその三冊目を編集していると、小林君、これでやめよう、と突然言われました。私はあまりにきっぱりと涼しいお顔で言われるのに驚きました。それで、先生の言われるままにしました。今考えると先生は、教育効果も認められたし、先生ご自身も充分楽しまれたし、ここが潮時、と思われたものと思います。研究を豊かにする体験はほどほどにして、本道に戻ろうとしたものと思われます。私の方では、この先生の態度から、ものごとの〈区切り〉、生き生きとした時間は、区切ることによって保たれるものだ、ということを学びました。このように先生は果断に富む人でした。

研究者としての先生は私たちに〈意欲〉がいかに大切かをよく語られました。今から二年前に、上石神井のロヨラハウスに先生をお訪ねしていろいろとお話をうかがったときも、論文を書く〈意欲〉が〈努力〉を生み、論文の〈体(てい)〉というものがわかってくるのだ、と熱く語られました。先生の研究への思いは、大著『細川幽斎の研究』として燦然と輝いております。

先生はまた、上智大学国文学科に三十四年間勤められ、国文学科及び上智大学国文学会のために多大なるご寄付をされました。それによって奨学金を学生に与えたり、新進の研究者を育成する土田賞を設けるなどして、先生の思いを実現させていただいています。

先生の、私たち後進に対する温かい思いは、形としても心としても、私の胸に生きております。いま、ここに参集された人たち一人一人の中に、先生と一対一の関係で生きております。

思えば先生は短歌を詠み、書道をたしなみ、謡いをなされていました。天に行かれましても、そのよく透るお声で、謡曲を時々はうたってお過ごしください。先生、これまでありがとうございました。先生、さようなら。

 

平成三十年十月三十一日

上智大学国文学科教員  小林 幸夫

平成30年度冬季大会 要旨

上智大学国文学会 平成30年度冬季大会要旨

標記は、次の通りです。

大会プログラムこちらです。

平成三十年度冬季大会発表要旨

芥川龍之介「玄鶴山房」論―「看護婦」「ゴム印」の同時代表象をめぐって―  木村 素子

 

芥川龍之介晩年の作品である「玄鶴山房」(昭和二年)は、芥川自身が書簡において提示した「新時代」意識を探る考察が中心に行われてきた。その際、作中に登場するリープクネヒトの『追憶録』に描かれた家族と作品内の家族との比較や、「看護婦」甲野とは何か、また、「ゴム印の特許」と玄鶴との関係などが問題として追究された。

本発表では、それらの論を踏まえ、「看護婦」と「ゴム印」に焦点を合わせて考察を試みる。「看護婦」という職業は、大正四年から有資格者のみが就業できる規則が整えられたにも関わらず、世間からは軽視されていたという当時の社会状況を踏まえることや、「ゴム印」が同時代においていかなる状況にあったのかを考えることによって見えてくる作品の問題性を検討することとする。

 

夢〉を視る《神経》―谷崎潤一郎「柳湯の事件」をめぐる考察         村山 麗

 

谷崎潤一郎「柳湯の事件」(大正七年十月)は、長年極度の「神経衰弱」を患う絵描きのKが、恋人の瑠璃子を「ヒステリー」に罹っていると思い込み、その恐怖から見た「幻覚」によって引き起こした殺人事件とその自白を描いた作品である。先行研究では、その神経病表象を取り上げ、当時の精神異常者をめぐる法制度との関係の追究や、雑誌『変態心理』等同時代のメディアにおける神経病言説に基づく分析がなされている。これらの論は、作品をめぐる同時代資料を提出した点において注目される。

しかし、本発表では作品における「神経衰弱」が、「幻覚」を視るという特徴を持っている点に着目し、この作品が独自の《神経病》表象を有していることを明らかにし、文学における同表象の史的展開の上に位置づけたい。

 

シンポジウム概要

古典学と仏教学                          

瀬間 正之

仏教を措いて古典文学を語ることは不可能であろう。上代文学においては、仏教思想の影響は軽微とは言え、仏典を利用した表現は多々指摘されている。また、日本霊異記をはじめとする仏教説話集は、その重要な編纂意図の一つにまさしく唱導・伝道があった。中古となれば、仏教は民衆へ浸透を見せ始め、「宿世」「罪」は源氏物語の重要な題材となる。中世以降、平家物語・徒然草・方丈記などはまさしく仏教なしに語ることは出来ない。以後多くの古典文学が仏教の影響下にあることは言うまでもない。

また、古典研究への影響も見逃せない。一条兼良の古典研究の背景には、宋学はもちろんのこと、禅学の深い造詣が認められる。客観的方法による古典研究もまた悉曇学の研究方法を学んだ阿闍梨・契沖の創始になることは周知の通りである。

今回のシンポジウムは、仏教学研究者と古典文学研究者を招き、仏教学研究者から観た古典文学、古典文学研究者から観た仏教をそれぞれ語ってもらい、その後の討論の糧としたい。

 

平成30年度冬季大会 大会案内

上智大学国文学会 平成30年度冬季大会

標記は、次を予定しています。

発表要旨はこちらです。

日時
2019年1月12日(土)13:30〜
会場
上智大学 7号館14階特別会議室
研究発表(13:30〜)
「芥川龍之介「玄鶴山房」論―「看護婦」「ゴム印」の同時代表象をめぐって―」
上智大学大学院国文学専攻博士後期課程  木村 素子
「〈夢〉を視る《神経》―谷崎潤一郎「柳湯の事件」をめぐる考察」
上智大学大学院国文学専攻博士後期課程  村山  麗
シンポジウム(15:15〜)
古典学と仏教学
パネリスト
「中世曹洞禅宗における伝説の秘伝化―「片岡山飢人説話」を中心に」
サンヴィド マルタ(国際交流基金PhDフェロー・駒澤大学禅研究所研究員・ヴェネチア大学博士課程後期)
「和歌文学と仏教ー関係性の諸相ー」
山本 章博(大正大学准教授)
「アジア諸国の恋愛文学と仏教の関係」
石井 公成(駒澤大学教授)
趣旨説明及び上代の状況
瀬間 正之(上智大学文学部教授)
懇親会(18:00〜)
上智大学 2号館5階教職員食堂
会費 4000円
卒業生の方の御参加を歓迎します。

土田先生追悼文

土田先生追悼文

大正大学准教授 山本章博

一九九二年に入学した時、土田先生は学長最後の年でした。新入生としては学長が国文学科の先生であることが誇らしく、また神保町の一誠堂に先生のご著書『細川幽斎の研究』が並べられているのを見て、いつか自分もと憧れを抱いたことが鮮明に記憶に残っています。その後、先生の授業を受ける機会は残念ながらありませんでしたが、入学から一〇年余りを経た二〇〇三年に、第一回土田賞をいただくことになりました。高校の専任として勤めはじめて三年目、いよいよ多忙になっていった頃でした。その中でも研究を捨てなかったのは、土田賞の励みとプレッシャーがあったのは言うまでもありません。先生の御恩と「霞光音」のお言葉を胸に書き続けていきたいと思います。天の神のもと、これからも見守っていただき、叱咤激励をお願いいたします。